Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

第一回 与謝野鉄幹 『東西南北』 

第一回 与謝野鉄幹 『東西南北』 明治29年

 

  おなじ道、おなじ真ごころ。二人して、いざ太刀とらむ、いざ筆とらむ。


槐園と賦す。 

 

〈直訳〉同じ道に同じ本当の心で、二人で、さあ刀をとろう、筆をとろう。


詞書の、「槐園」とは、鮎貝槐園のことだろうか。「賦(ふ)す」とは、「(袂を)分かつ」という意味である。
なぜこの歌を選んだかといえば、分かりやすく、衒うことなく、率直な歌だからである。
鉄幹は、槐園を余程信頼していたのであろう。同歌集の中に、


           おなじ折、槐園の歌に。


  荻の葉を、けさ吹く風の、初かぜに、襟をただして、聞くべかりけり。


とある。槐園を思うと、気持ちが謙虚になったのだろう。歌への気持ちが真っ直ぐになるのだろうと考察した。この歌集『東西南北』は、明治29年に編まれた。鉄幹は23歳であった。
 その他に気になった点は、「太刀」という言葉がよく使われていること。自然詠が、まだ未熟なのでは、という二点である。