Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

2022年8月8日 お詫びとご報告

この頁を開いてくださっている皆様 7月5日に再スタートを図り、一ヵ月以上、更新せずにおりました事、本当に情けなく、又、恥ずかしく、受け止めております。 本当に、申し訳ございません。 眼瞼痙攣並びに眼球使用困難症候群との診断が下り、なるべく、パソ…

本日の一首 ー 関口智子

断りの返事は程良く軽々と絵文字にペコリとお辞儀をさせて 関口智子 拙歌である。私は長らく歌会で「零点(0点)」と「一点」を行ったり来たりしていた。色々な試みの実験場として歌会に臨んでいたと思う。と言えば聞こえは良いが、私は私以外の誰かになっ…

本日の一首 ー 阿木津英『黄鳥』(2014)砂子屋書房 p131

仰ぎつつ歩みをとどむ夕ぞらはいまだも青きひかりながらふ 阿木津英 「芸術というものは、何千人もの気長な仕事ぶりと思考と感情から生まれてくるものである。/ 余暇は芸術のために絶対必要である」。この文章を目にした時に、「?」と思った箇所があった。…

本日の一首 ー 『八雁』十周年

一棟の壁を照らせりひがしよりわたり来りてあかきひかりは 阿木津英 短歌結社『八雁』は今年で十年を迎える。運よく2011年の末月に滑り込んだ私は、ただ単に、月一度の「歌会」が楽しくてここまで来てしまった。阿木津氏からもっと歌数を増やすように言われ…

Karikomuをご高覧頂いている皆様へ この頁を開いてくださっている大切な方々へ、心より感謝申し上げます。本当に、有り難うございます。不本意ながらの告知ではありますが、体調と環境を整えるべく、6月1日まで、長期休載をすることと致しました。試し試し…

本日の一首 ー 永田和宏

あの胸が岬のように遠かった。畜生! いつまでおれの少年 『メビウスの地平』(2020)現代短歌社 本所には置行堀(おいてけぼり)のあるといふ置いてけとなぜ叫ばなかった 岬に立つのがもう似合はない年齢になつたのだらう海も見なくて 『置行堀』(2021) 現…

本日の一首 ー 阿木津英「釋迢空」について④(前半・後半 ー 合併号)

下記、釋迢空の略年を通して、時代背景を記す。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1887年(明治20)大阪浪速区の生薬屋に生まれる。 *M30 正岡子規の写生1900年(明治33)十四歳。父に買ってもらった『言海』…

本日の一首 ー 水島育子

君に会えば楽しきことを言いたくてスマホのメモに話題を記す 水島育子『八雁』(2022年1月号) p83 やや欠詠が続いていた水島育子氏の久しぶりの出詠に、ほろりとした。ここまで、実直な歌があるだろうかと思う。昨今の口語短歌は、好き勝手に歌を作ることが、…

本日の一首 ー 杉下幹雄『俚歌』(2014)本阿弥書店

丹沢にゆふべ降りたるはだれ雪ひるをまたずに消えにけるかも 鐘楼のみどりの屋根のむかうには今年の桜二分か三分か 菜の花のまばらに咲きて捨て畑去年耘(くさぎ)りし人のゆくへや 花の枝にみどりはあさくさしそめてあかるき雨の通りゆくなり 野田の道風の…

大切な方々へ いつもKarikomuをご高覧頂き、本当に、有り難うございます。 諸事情により、次回の更新は、1月31日(月)となります。 折角に掲示板を開いて頂いた方へ、心よりお詫び申し上げます。 2022年も、心の換気をしながら、精進したく思っておりますの…

本日の一首 ー 小田鮎子

コンビニに水を買うため立ち寄れば二、三種類の水冷えている 小田鮎子『八雁』(2022年1月号) p4 この歌は、逐語訳の要らない歌である。歌集であれば「箸休め」としての役割を果たすであろう歌。小田氏は、時折、この様な無機質なものを素材として扱い、詠う…

本日の一首 ー 上妻朱美『姶良』(2021)砂子屋書房

わずかにも伸びたる爪が気にかかり午前二時ごろ起き出でて切る p42 ほとばしる水の下にて擦ったり回したりして大皿洗う p49 大蒜とローズマリーを惜しみなくオリーブオイルに鰯を揚ぐる p66 花びらの一枚いちまいに水くばる春の桜のよく機能して p67 無邪気…

斉藤政夫 ー 感動を表現するには

感動を表現するには 子どもの虐待事件が報道されるたびに、胸が痛む。2019年1月24日に千葉県野田市で起きた小4女児死亡事件は忘れられない。小学4年栗原心愛(みあ)さんは義父から拷問ともいえるほどの虐待を受けて死亡した。 心愛さんは11月6日、当時…

本日の一首 ー 阿木津英「釋迢空」について③(前半)

下記、釋迢空の略年を通して、時代背景を記す。 1887年(明治20)大阪浪速区の生薬屋に生まれる。 1900年(明治33)十四歳。父に買ってもらった『言海』『万葉集略解』を精読、筆写。 *『言海』・・・国語辞典。 1901年(明治34)十五歳。三兄の進(すすむ…

本日の一首 ー 阿木津英「釋迢空」について②

釋迢空の表記法について。迢空は、読点、句読点を用い、又、他行書きも試みている。これは、自身の判断によるものであるが、その根拠は深いものであることを記しておきたい。 和歌の時代は、短冊や色紙にはしり書きをすることが当然であった。墨書きの字面や…

本日の一首 ー 阿木津英「釋迢空」について①

短歌において、「歌のもつ響きの骨格」、すなわち、「形式」は重要である。十人いれば十人十色では駄目である。上手な噺家のしゃべりは素人のしゃべりとは異なる。これは、「歌」なので、最終的には、「耳の問題」である。近代になってから、「形式と内容」…

本日の一首 ー 釋迢空 わだつみの豊はた雲とあはれなる浮きねのひるの夢とたゆたふ

わだつみの豊はた雲とあはれなる浮きねのひるの夢とたゆたふ わたつみの豊はた雲と あはれなる浮き寝の昼の夢と たゆたふ *歌は「構造」をきちんと分かっていないと、意味が明確に分からない。 *「(雲)と」「(夢)と」は”並列”の「と」になっている。 …

本日の一首 ー 水原紫苑

影ながく曳く人をわが父と識るにせあかしあが花こぼす頃 ひかりさす御堂(みだう)に濡れて長眉の吉祥天の御(おほん)くちびる 飲食(おんじき)の店を尋ねて降(くだり)りゆく階段深き朱(あけ)のいろなる 雲ふみて来たりしやうな男ゐて虹を語らばかなし…

本日の一首 ー 詠み人知らず

凍てつきし道げに寒く一人行く一人追いつく冬風のなか 詠み人知らず 一目惚れだったと思う。高校の夏休みの課題で、短歌を五首作る宿題が出た。提出後、古典の先生に呼び出され、「毎週十首、短歌を作って来なさい」と言われた。生徒指導担当の恐い先生に言…

本日の一首 ー 永井亘(復刻版)『第88号 現代短歌(「第九回 現代短歌社賞発表」)』を読んで。

生きるとき死体はないが探偵は文字をひらめく棺のように 「静けさの冒険」永井亘 p32(瀬戸夏子 選) そもそも、新人賞とは何を指標としているのであろうか。「目新しさ」が最優先基準なのだろうか。そうであれば、なぜその作品が「新しい」のか、その「新し…

本日の一首 ー 『第88号 現代短歌(「第九回 現代短歌社賞発表」)』を読んで。

<第九回現代短歌社賞> 受賞作品(同時受賞・二作品) 母逝きしこの世の冬の夕空をこゑはろばろと白鳥わたる 在りし日の父母を思ひてわれら亡き後をし思ひ仏具を磨く 近づきし白鳥のこゑこの丘にしばし響きてふたたび遠し 打矢京子『冬芽』p24-29(阿木津英 …

本日の一首 ー 河野幸子

今日の日の溺るるごとき一人居の夕べ机を手に押して立つ 河野幸子『八雁 通巻60号』(2021年11月号)p3 「助詞」といえば、河野幸子氏が浮かぶ。玉城徹氏は「(短歌は)最後は人間だ」と仰ったそうだが、その通りだと思う。何かの場で、河野氏が「もう一度…

本日の一首 ー 工藤貴響(『角川短歌 (2021年11月号)-第67回 角川短歌賞発表』)

角川短歌賞の次席(受賞該当作なし)に、工藤貴響さんが選ばれた。ここ半年の「八雁」でも、盤石な歌の力を感じ、一体、どうしたらこんなに成長できるのだろうと思っていたところの、吉報であった。 もっと早くに、この事を書きたかったのだが、選考座談会に…

本日の一首 ー 釋迢空

己斐駅を過ぎしころ ふとしはぶきす。寝ざめのゝちの 静かなる思ひ p452 十月に既(ハヤ)く 時雨の感じする雨あがり居つ。とんねるの外 p452 『倭をぐな』 釈迢空 『釈迢空全歌集』(2016)角川ソフィア文庫 私が最初に「釋迢空」に出会ったのは、現代短歌全…

本日の一首 ー (改・改め)『現代短歌 第87号』を読んで。

『現代短歌 第87号』を読んだ。今特集は「BR書評賞」(ブックレビュー賞)である。一読して難しい内容で、抽象論も多く、尻込みをした。それから数日経って、ぱらぱらと何回か眺めているうちに、ようやく、「理解してみよう」「面白そうではないか」という気…

本日の一首 ー 『現代短歌 第87号』を読んで。

『現代短歌 第87号』を読んだ。今特集は「BR書評賞」(ブックレビュー賞)である。一読して難しい内容で、抽象論も多く、尻込みをした。それから数日経って、ぱらぱらと何回か眺めているうちに、ようやく、「理解してみよう」「面白そうではないか」という気…

「感性を鍛える」(斎藤政夫)

詩でも良い。短歌でもいい。いい作品を作りたい。そう願いながら、もう何年も過ごしてきた……、怠惰に。 たとえば、こんな歌を作りたい。 青葦の茎をうつせる水明かり風過ぐるときましてかがよふ 春日井健 漢字を使わないと伝えられないような歌である。漢字…

本日の一首 (改)ー 佐藤佐太郎

昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立(こだち)のなかに歩みをとどむ p87 おのづから心つかるれ日曜の午後の時間をもてあましつつ p89 座布団を廊下にしきて暑き日のしましを凌ぐ声もたてなく p99 ともしさも馴れゆくらしきこのごろや夕暮れし部屋われは掃…

本日の一首 ー 佐藤佐太郎

昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立(こだち)のなかに歩みをとどむ p87 おのづから心つかるれ日曜の午後の時間をもてあましつつ p89 座布団を廊下にしきて暑き日のしましを凌ぐ声もたてなく p99 ともしさも馴れゆくらしきこのごろや夕暮れし部屋われは掃…

本日の一首ー中西敏子 第二歌集 『呼子』

この道と決めて来れど迷ひたり蜜を流したやうな春昼 連なりてとんぼは夕日へ入りゆけり呼びもどすもの何もなき空 『 呼子』中西敏子 ながらみ書房 (2021) p20 p27 中西敏子氏の歌には、邪念が無い。こうしたらもっと上手くなる、こうしたらもっと万人受けが…