Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

個人研究ー私はなぜ前川佐美雄が好きか

第七十二回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(29)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑮

第七十二回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(29)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑮ 2018年12月19日の記事をそのまま下記に示す。それを元に、現時点での私が大事だと思う事を加筆修正しながら、お伝えするように試みる。 ・・・・・・・・・・…

第七十回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(27)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑬

第七十回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(27)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑬ ー基盤模索時代(1)ーp131 『白鳳』の後記では、佐美雄は「かへりみると昭和四、五年の二年間はだいたい作歌を中止している」「昭和六年になつて「短歌作品」…

第六十九回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(26)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑫

第六十九回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(26)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑫ 『白鳳』の世界—シュールレアリスムの内面化 p126 1、《野》の発見 野にかへり野に爬虫類をやしなふはつひに復讐にそなへむがため 『白鳳』の巻頭歌である。…

第六十八回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(25)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑪

第六十八回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(25)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑪ 『白鳳』の世界—シュールレアリスムの内面化 p126 『白鳳』は佐美雄の本としては目立たない歌集である。内容的に地味だということではない。出版経緯がこの歌…

第六十七回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(24)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑩

第六十七回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(24)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑩ 〇『植物祭』の史的意義の補足(p114) モダニズムとプロレタリアといった区分を抜きにして、昭和のはじめに登場した新興短歌は、大正期短歌の否定をモチーフ…

第六十六回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(23)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑨

第六十六回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(23)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑨ 〈『植物祭』の史的意義 〉 〇外的な枠組みが本質的な問題ではない大切なのは“方法”である(という主張)。 p105 〇プロレタリア短歌からもモダニズム短歌から…

第六十五回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(22)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑧

第六十五回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(22)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑧〇表現の特質 ・自己の客体化 ・自他の二重性 ・自他の交換 ・既成への否定意志今回は、上記の「既成への否定意志」についてを要約します。 〈表現の特質ー既…

第六十四回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(21)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑦

第六十四回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(21)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑦ 〇表現の特質 ・自己の客体化 ・自他の二重性 ・自他の交換 ・既成への否定意志今回は、上記の「自他の交換」についてを要約します。 〈表現の特質ー自他の交…

第六十三回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(20)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑥

第六十三回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(20)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑥ 〇表現の特質 ・自己の客体化 ・自他の二重性 ・自他の交換 ・既成への否定意志 今回は、上記の「自他の二重性」についてを要約します。 〈表現の特質ー自他…

第六十二回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(19)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑤

第六十二回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(19)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ⑤ 〇表現の特質 ・自己の客体化 ・自他の二重性 ・自他の交換 ・既成への否定意志 今回は、上記の「自己の客体化」についてを要約します。 〈表現の特質ー自己…

第六十回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(17)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ③

第六十回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(17)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ③ 1、誕生から『植物祭』までー③ 〈『植物祭』の世界 〉 ー概略ー 〇表紙へのこだわり 絵画を志していた前川佐美雄は、本人が衝撃を受けた古賀春江の絵を表紙に…

第五十九回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(16)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ②

第五十九回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(16)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ② 1、誕生から『植物祭』までー② 再上京した佐美雄は、口語歌運動からでた「プロレタリア歌人」と「モダニズム歌人」、いわゆる革新派の新興短歌、そこからま…

第五十八回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(15)ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ①

第五十八回 ー『前川佐美雄』三枝昂之 五柳書院(1993)に学ぶ① 1、誕生から『植物祭』まで 1903年 明治36年 2月5日 奈良県 忍海(おしみ)にて、前川佐美雄誕生 大正10年 4月 「心の花」誌上デビュー(18歳) 大正11年 上京 大正12年 古賀春江の絵画を見て…

第三十八回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(14)

第十四回 個人研究発表ー『積日』選歌 前川佐美雄 第9歌集『積日』(1947年・全500首)より20首 いきどほる心もあらず無賴(ぶらい)なる人間の徒(と)となりて落ち行く 落ちのびて行くにちがひはなけれどもしか言はざりき心素直に みつまたの花さびざびと…

第三十七回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(13)

第十三回 個人研究発表ー『紅梅』選歌 前川佐美雄 第8歌集『紅梅』(1946年・全245首)より14首 あらたまり行くもの何ぞ美しき春の現象世界のみかは インテリと罵(ののし)られ無産者運動に加はらむとしき二十年前(にじふねんまへ)は 鴎州に行かむ願望(…

第三十六回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(12)

第十二回 個人研究発表ー『金剛』選歌 前川佐美雄 第7歌集『金剛』(1945年・全653首)より18首 われは明治の少年ぞかし菊の香(か)にむかしを思ふこころ切なき 荒壁(あらかべ)の家(いへ)に住まへど御三代にあへらく今日は生ける甲斐(かひ)あり たか…

第三十五回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(11)

第十一回 個人研究発表ー『日本し美し』選歌 前川佐美雄 第6歌集『頌歌 日本し美し』(1943年・全618首)より 〈選歌18首〉 鮮明(あざやか)によみがへる我(われ)が民ごころに既に紅々(あかあか)し今年(ことし)のもみぢ 日に月に息づかしさの重(おも…

第二十七回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(10)

第十回 個人研究発表ー『天平雲』選歌 前川佐美雄 第4歌集『天平雲』(1942年・全710首)より 〈選歌22首〉草ふかき野の眞晝間に組み伏する逞(たくま)しき夢も過ぎてかへらず炎天におのれ鋭(するど)き眼(め)をあきて身がまふるがに生きぬくとする夕虹は明る…

第二十六回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(9)

第九回 研究発表(2017.9.18)〈前川佐美雄生誕までの歌壇情勢〉 1、和歌から短歌へ 明治26年~明治33年明治維新後、少なくとも明治10年(1877)までは、和歌から短歌への近代化は、歌の世界には浸透していかなかった。歌壇を形成していたのは、堂上派、鈴…

第二十五回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(8)

第八回 研究発表(2017.7.19)新興短歌の軌跡における佐美雄の位置 昭和10年頃までの文壇は、既成作家・プロレタリア作家・新興芸術派作家の三派が鼎立し抗争していた。そして、それに影響を受けた歌壇情勢は、三派鼎立という形をとっていくこととなる。 す…

第二十四回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(7)

第七回 前川佐美雄の人物像(2017.5.22)(1) 略歴(前編)(2) 略歴(後編)・(次回掲載)(3) 歌、短歌史にみる人物像(次回掲載) (1)略歴(前編) 明治36年(1903)、2月に奈良県に生まれる。代々の地主一家で、経済的に豊かな家庭環境であっ…

第二十三回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(6)

第六回 研究発表(『大和』選歌)(2017.2.22)前川佐美雄 第2歌集『大和』(1940・全550首)より44首 〈選歌13首〉 ゆく秋のわが身せつなく儚はかなくて樹きに登りゆさゆさ紅葉こうえふ散らす 春の日なかに門しめてこもり犬と遊べど畜生われを仲間と思ふな …

第二十二回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(5)

第五回 (2)研究発表 (2017.1.29)『前川佐美雄』三枝昂之著(五柳書院・1993)のまとめ 1、 「昭和短歌」という領域の想定 明治以降の短歌は、近代短歌と現代短歌に区分されることが多い。 <大正期>木俣修は『昭和短歌史』の第一章で、「大正時代が十五…

第二十一回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(4)

第四回 (1)歌集『白鳳』より選歌と感想 (2017.1.22)前川佐美雄 第3歌集『白鳳(はくほう)』(1941・全410首)より28首*第3歌集『白鳳』は、第2歌集『大和』(1940)以前に、作歌された歌をおさめている。 〈選歌二十八首〉 いきものの人ひとりゐぬ野…

第十九回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(2)

第二回 研究発表(歌集『春の日』より選歌と疑問点)(2016.11.19) 前川佐美雄 第5歌集『春の日』(1943)より二十一首*第5歌集『春の日』は、第1歌集『植物祭』以前に、作歌された歌をおさめている。 〈選歌二十一首〉 向日葵のしげれる中に人目(ひとめ…

第十八回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(1)

第一回 研究テーマについて(2016.10.25) 【テーマ】「私はなぜ前川佐美雄が好きか」 【題材】 1、 選歌十首(前川佐美雄歌集・全14集) 2、 人物像の調査 3、時代背景の調査 4、 相対的な前川佐美雄についてのまとめ 5、 絶対的な前川佐美雄についてのまと…