Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

大川

選歌するということ

先日のオンライン歌会には、草林集から3人の方々がおいでくださった。私はいたく感じ入ったのだった。歌評の着眼点が、わたし(たち)と違う。言葉、文法、用例の確かな知識の上にご自身の考えや感じ方があって、言葉に忠実だ。知識を振りかざしたり、議論に…

梅を詠んだ歌

梅が咲き満ちている。昼は白や紅に樹全体がけぶり、鳥が鳴き集う。夜は濃く甘い香りが漂い、心惹かれる。詠いたいのに、どこから詠っていいかわからない。梅という題材は、どのように詠まれてきたのだろう。 我がやどの梅の下枝に遊びつつ鶯鳴くも散らまく惜…

短歌覚書(工藤貴響『八雁』)

かなしみの向こう側なる冬空に機体は白きひかりを走らす 工藤 貴響『八雁』2021年1月号 【逐語訳】 かなしみの向こう側にある冬空に機体は白いひかりを走らせる 【鑑賞】 かなしみがあって、その向こう側に冬空がある。晴れているのだろう、そこにきらりと…

歌集覚書 髙橋則子『窓』

ひろげたるつばさの内らほの白く下り来るなり春のくもりを 来て動くこの単純を見むと寄る窓ちかぢかと地面に雀 目覚めゆく眼につぎつぎに啼きながら雀枝につく夢の如くに いくたびと思ひまたおもひ亡き人のことばたちくる活きいきとして ひともとのとほき青…

現実を貫く力を…2(八雁・石川亞弓)

前回、石川亞弓さんの歌、 戦争だ敵だとすぐにいいたがるこれだから男ってやつは について、「生産性のない愚痴のようなところが、疵になっている」と書いたのだが、自分の中でもう少しはっきりと言葉にしておきたい。 私が最初にこの歌をいいと思ったのは上…

現実を貫く力を…(八雁・石川亞弓)

戦争だ敵だとすぐにいいたがるこれだから男ってやつは 石川 亞弓 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)は3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」と発…

本歌取りの妙(北原白秋)

春過ぎて夏来たるらし白妙のところてんぐさ取る人のみゆ 北原白秋『雲母集』 今日はいいお天気で、昼食を摂っていると遠くのマンションに洗濯物か何か干すのが見えた。「衣ほすてふ」という持統天皇の歌が頭を過ぎって、(季節は違えど)現代に置き換えたら…

強制力としての破調(大森静佳)

ずっと味方でいてよ菜の花咲くなかを味方は愛の言葉ではない 大森静佳 初句、「ずっと味方でいてよ」はかぎかっこで括ることのできる呼び掛けの言葉である。相手が裏切ることを半ば想定していて、先回りして釘を刺したり言質を取ったりするような感じがある…