第十四回 草山隠者 『池塘集』
草山隠者(青山霞村・あおやまかそん)『池塘集(ちとうしゅう)』(明治39年刊行)より選歌(全327首)
*この歌集は、私家版・非売品として発行された。
〈選歌13首〉
はるあそび野宮山寺靄のうち花を訪ふ人草を踏む人
三千の花の宮女に歌はれた才もないのにわれ詩を作る
花は散つてげたのはがたに葬られ雨に亡びる春の王国
とつてゆけ亜米利加衣はもういらぬ大和のをのこ大和の魂
舞姫が秘めて放さぬ雪の扇墨濃いは誰が楊柳の詞ことば
六日見ぬと七秋みない恋しさに雪の今日でも逢ひに来たとよ
森や塔や花は錦の幕張つて醍醐の春よ風もそよがぬ
花に暮れて今宵も思ふうなゐらにダビデの話はなししてゐた人を
菊を買ひ古器買ひ下京やかねての秋の一日も暮れた
のこしおきし詩集や鍬どうなりし菊香ばしき九月九日
柑子色の肩掛を着て君とわが語りし雪の夜ぞ忘られぬ
ゆべの夢西なる窓に母と倚りて七十二峰の青き眺めし
病みながら清水酌みしに夢か夢黄葉するまで秋闌けにけり
〈感想〉
草山隠者(青山霞村)本名:嘉二郎 (明治7年~大正15年)
京都市深草出身
渡米した経緯などもあり、終生、口語短歌を愛した。
「池塘」とは、①池のつつみ ②高層湿原の池 の意味。
掴みどころの分からない歌集だと自分は感じたが、選歌後、下記のブログの作者の選歌に驚いた。
選歌次第で、こんなにも歌集の印象やインパクトが変わってしまう。自分の選歌とは雲泥の差である。
歌集や歌の良さを、ちゃんと伝えられるように選歌して参りたい。
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kirikoro.exblog.jpさんのブログより引用
うた人が佳い句に点うちゆくやうに晴れてまた降る三日春雨
懐疑(うたがひ)を叱りなだめて萩の径われに道説く姉があつたら
露霧でいつしか深うなつて来た草に熟柿を踏む山の秋
雪の暮冥濛として天地は滅びの時が来たやうである
(すべて青山霞村『池塘集』より)
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(文責:関口)
【引用文献】
『近代短歌全集』第一巻 筑摩書房(1980)
なんじゃもんじゃ kirikoro.exblog.jp http://kirikoro.exblog.jp/2337369/