Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首

怒をばしづめんとして地の果(はて)の白大陸(しろたいりく)暗緑海(あんりよくかい)をしのびゐたりき

宮柊二宮柊二歌集』 宮英子・高野公彦編  岩波文庫 (1992)

 

 今年の春、一人住まいを始めた。言わずもがな、家庭の事情だった。看護をしながら短歌に携わっていた日々。両親を残して実家を出ることに、後ろ髪を引かれる思いが無かった訳ではない。けれども、周囲の意見は、皆、一致して「あなた自身の為に、家を出た方がよい」というものであった。当時、基、半年前まで、私は掲出歌を、念仏の様に心の中で唱えながら、過ごしていた。今日、この歌を私は懐かしく思い出している。月日はちゃんと流れていた。今の私は無意識のうちに、どんな歌に己を結びつけているのか。振り返るその日が来るように、読み、書き、詠み、歩き続けるしかない。