Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首 

この花も終ると思ふわびしさに夕寒む寒むと剪り惜しみつつ

  江口きち 『江口きち歌集(『武尊の麓』)より 』 至芸出版社 (1991)

  色々な本と色々な出会い方をする。その人その人によってそれは違うものである。私が「江口きち」の名を聞きかじったのは、五年以上前になる。心の隅に掛けられていた、名前。そしてなぜか、その名を忘れることは無かった。2020年2月に独居を始め、3月から自粛生活が始まった。予期せぬ事の連続と一人であることの甘えから、易き方に流れて半年以上が経つ。今、今ではないか、何もないと虚しくなった秋空に、縋る様にこの歌集を手にした。この二首は、どうであろう。一人住まいであろうが同居人がいようが、予定調和であろうがそうでなかろうが、関係無い。作者の世界観が、読後に如実に顕れる。歌を詠むには、強さも弱さも求められるのだ。強さも弱さも必要なのだ。