Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の詩 ― 斉藤政夫の詩への感想

斉藤政夫氏の詩への感想

 読んで泣けば良いという訳では無いが、この詩には、細部に斉藤氏の表現への希求が、確かに見られる。心の底から書かずにはいられない渦が巻き上がり、斉藤氏の気息が嵌め込んだ言葉が顕れる。例えばそれは、『遺伝的なもの』の中の「(哀しみの)かたわれ」、『あなたの声』の「(言葉が)足りない」、「時のやさし」という表現に、氏が短歌を通して学び得た、言葉への、品性、美しさ、が確固としてあるのだ。これらの、見失われそうなほんの一つずつの言葉。なぜか分からずに繰り返し繰り返し読み、「神は細部に宿る」という意味を知らしめられた。この二篇は、嘆きではない、曝け出した慰めでもない。「詩」なのである。それも、血の通い、自立し、(読み手の中で)動き出す、「詩」であるのだ。