Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首 ー 飯田彩乃『リヴァーサイド』より

 

まばたきと同じ昏さに散つてゆく花とは時間(とき)の単位のひとつ

       飯田彩乃 『リヴァーサイド』本阿弥書店 (2018)p106

 

 「八雁」のT田氏の紹介で手にした若手歌人の歌集である。常々、今現在、「口語短歌」「若手歌人」と呼ばれている歌人の歌集に、あまり食指の動かないままではあるが、この頃は、敢えて、逆流を上る思いで、何冊か読んでいる。ただ、この歌集に限らず、若手の方々の語彙力には驚いていることを記しておきたい。例えば、この「昏さ」など。おそらく「くらさ」と読むのだが、意味は「暗い・昏い・冥い」と同義である。

逐語訳(瞼の)瞬きと同じほどはっきりせずに(気が付くと自然に)散ってゆく花とは時間の経過を示す単位の一つのようだ。

 この発見、感性が良いと思えた。加えて、一首に美しく成す、作者の力。発想が豊かでも、それを一首に生かせるかどうかはまた、異なった力を必要とする。「時間」に「とき」とルビをふりながら、「昏さ」はそのままに堂々と扱う、この、言葉への奥深い神経。こんな風に思える様にこれからも歌を読んでいきたい。