Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首 ー 野口和夫

くしゃみした拍子にのど飴飛び出して凍るホームに終電を待つ

  野口和夫『現代短歌・1月号・第82号』(2021)p79

 第八回現代短歌社賞、佳作『不採用通知』、より一首。久しぶりに、良い意味でフラットな歌に出会えた。その他の歌も、大きく道理から逸れることのない快作だと感じた。掲出歌も、「おしゃべり」になりそうな出来事を、しっかり整えている。笑いを誘いながらも、作者の心中を察して同情が湧いた。歌とはこういうものだと、感覚的に思い起こされた。気張らなくて良い。不格好で良い。知っている言葉で良い。地味だろうが華があろうが、正直に詠え。そこにしか、己の歌は存在し得ないのだ。頭で考えるな、腹の底から、歌を生め、そうでなければ、その歌に己の魂は宿らないのだ。