Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首

派手派手のスパンコールのマスクして友とはしゃぎ行く中華街

  第八十八回 八雁横浜歌会(2021年1月24日) 関口智子 

 言葉にならない程の意義深い大目玉を喰らった私自身の歌である。阿木津英氏はこの歌に関して、「凄く嫌な感じが残る」、「目立ちたいという心から出てくる言葉」、「素直さが足りない」、「人に見せたい」、そういう気持ちが残る歌はいけない、自分の真ん中、本心から出て来ていない、目立ちたがりの歌、と評した。私が何より驚いたのは、その様な解釈の「角度」があるということだった。きょとんとしてから数日考え、末に、気が付いた。実際に、私は友と中華街を歩きスパンコールのマスクを買って過ごした。だから、この歌を作った時に、それをそのまま五七五七七に当てはめるだけのことしかしていない。その点も猛省すべきだが、阿木津氏の解釈の本当の意味は、「私は(意識的に)『わざとはしゃいで』友と派手なマスクをして歩いた」その、『わざと』がいやらしさを醸し出し、更には、『わざと』そうして歩いた(もう何もかもどうでもいいという)気持ちを、無意識のうちにすっ飛ばして歌にした。そこから発生した嫌な空気感を感じ取った解釈である。無論、『わざと』はしゃいだ事を意識的に詠み込めば良い歌になるかといえば、そうでは無い。日常の振る舞いが歌に裏打ちされた、としか言い様が無い。歌そのものが持つ深みをまだまだ知り得ていない我。そして何より、一気に視界が変わってしまう様な解釈の力に、畏怖と可能性を深く感じた。