本日の一篇 ー ウルベント・サバ 須賀敦子訳
ミラノ
石と霧のあいだで、ぼくは
休日を愉しむ。大聖堂の
広場に憩う。星の
かわりに
夜ごと、ことばに灯がともる。
人生ほど、
生きる疲れを癒してくれるものは、ない。
ウルベント・サバ
須賀敦子訳
<メモ・感想>
2018年、ある朝、起きようとしたら瞼が開かない。勘と手探りで廊下を伝い、母親を起こし、目がどうなっているのかを教えて欲しいと頼んだ。結果、眼瞼痙攣との診断名がついた。以来、今日の今日まで、一冊の文庫本も、読めない状態が続いた。日に日に落ちていく、読書量と集中力。それに伴って、焦りが走り、短歌に関する本以外、読んでいる暇は無いと、自身の勝手な思い込みに、追い詰められていた。そんな時に、歌会で御一緒しているA部さんが、本を貸して下さった。学生時代に一、二冊ほど読んだことのある、須賀敦子氏の著。文体が好きだったので、覚えていた。A部さんもこの本を好きだったのかと嬉しくなった。そして、今日、肌寒さ残る春の日、自然光の下に、三年ぶりの「読書」ー二十頁ーを成した。そして、どの様な本でも、その文学体験は、短歌にとってプラスになるのだと、当たり前のことを、腹の底から味わった。多謝。