Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首 ー前川緑(四)

一日の短かさをわが歎(たん)ずれば冬の薔薇生きて赤き花咲く

この夜ごろ樹々にあらびて吹く風をいと身近しと省(かへりみ)するも

                   『乳母車』 より抜粋二首

  前川緑『現代短歌文庫砂子屋書房 (2009) p24

 <メモ・感想>

 一首目は、作りとして「~すれば、~」という基本的な歌い方であるが、場面展開と共に作者の意識の変容が伝わってくる、意味のある場面展開だと思った。また、「歎ずる」という言葉が全体を引き締めていると感じられた。語彙の多さが利いている。二首目は、意味が分からないのであるが、何かを伝えたいという「表現欲求」に心を預けたくなった。きれいな景色、きれいな言葉、きれいな語法、それが悪いとは言わない。必要だとも思う。表現欲求が在っても良い歌だとは限らない。けれども、少なくとも私自身は、常に、この様な表現欲求から端を発し、歌を詠み作りたいと思う。