Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首 ー 小田鮎子

コンビニに水を買うため立ち寄れば二、三種類の水冷えている

  小田鮎子『八雁』(2022年1月号) p4

 この歌は、逐語訳の要らない歌である。歌集であれば「箸休め」としての役割を果たすであろう歌。小田氏は、時折、この様な無機質なものを素材として扱い、詠うことがある。それを、これまでの私は訝しげに思ってみてきたが、ここにして思うのは、それが、決して「散文」にならない、すれすれの所で「歌」にする、氏の経験値の高さである。日常の場面場面で、これは歌になるならないといった選択を如何に重ねて来たか。そこには、テキストも正答も無い。体感の積み重ねで掴んだものであると私は思う。逆に言えば、その様な鍛え方をしていない私には、とても詠えない一首である。私は随分と理解に時間が掛かってしまったが、掲出歌の有り様が、「個性」、あるいは、「文体」として、見えてきた今、氏のこの様な歌を、短歌の詩形の美に通じている一首一首として、尊重する気持ちになった。 

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*当面の間、月曜日・木曜日を目処とした週二回の更新になります。何卒宜しくお願い申し上げます。

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