本日の一首 ー前川緑(五)
霜凍る朝に思へばあやふくは切子の花瓶もわが碎くべき
石屑のごとく踏みつつわが魂の火花となりてかがやく日もあれ
『花瓶』
前川緑『現代短歌文庫』砂子屋書房 (2009) p26-27
<メモ・感想>
これもまた、一読でははっきりとしない箇所がある。一首目の逐語訳は、
逐語訳:霜の凍る朝にあれこれと思い考えていると、危うく、切子の花瓶すらも私は砕きそうだ。
とした。この歌も、感情の変容を担っている。
二首目は、結句の「(かがやく日も)あれ」という語に、これからの心持ちや人生の広がりを感じさせる終わらせ方が、良いと思った。
前川緑の歌は、気持ちに添って成す。内向的な感受性が現実に触れ発露する感覚を受ける。この先に、観察眼が芽生えて来るのか、興味深い。