Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

本日の一首 ー前川緑(五)

霜凍る朝に思へばあやふくは切子の花瓶もわが碎くべき 石屑のごとく踏みつつわが魂の火花となりてかがやく日もあれ 『花瓶』 前川緑『現代短歌文庫』砂子屋書房 (2009) p26-27 <メモ・感想> これもまた、一読でははっきりとしない箇所がある。一首目の逐…

本日の一首 ー前川緑(四)

一日の短かさをわが歎(たん)ずれば冬の薔薇生きて赤き花咲く この夜ごろ樹々にあらびて吹く風をいと身近しと省(かへりみ)するも 『乳母車』 より抜粋二首 前川緑『現代短歌文庫』砂子屋書房 (2009) p24 <メモ・感想> 一首目は、作りとして「~すれば…

本日の一首 ー前川緑(三)

わが生まむ女童はまばたきひとつせず薔薇見れば薔薇のその花の上に 月足らず生れ來しは見目淸くこの世のものとわれは思へず 生れ來て硝子の箱にかすかなる生命保ちぬながき五日を 『逝きし兒』 さにはべのつらつら椿つらつらに父の邊に來て病やしなふ 傷負ひ…

本日の一首 ー前川緑(ニ) おさらい編

昭和十二年七月日支事變始まる この庭はいと荒れにけり下り立ちて見ればしどろにしやがの花咲く 逐語訳:この庭は大変荒れてしまっているなあ、そこに下りて立って見ると、秩序なく乱れてシャガ(アヤメ科の多年草)の花が咲いている。 朝闇をつんざきて來る…

本日の一首 ー前川緑(ニ)

昭和十二年七月日支事變始まる この庭はいと荒れにけり下り立ちて見ればしどろにしやがの花咲く 朝闇をつんざきて來る銃の音ただならぬ時を額あつく居ぬ 奈良に住み西の山見る愁ありその夕雲に包まれやする 淺茅原野を野の限り泣く蟲のあらたま響き夜の原に…

本日の一首 ー 前川緑(一)  おさらい編

束ねたる春すみれ手に野の道を泣きつつ行けばバスすぎ行きぬ 逐語訳:束ねている春のすみれの花を手に持って野道を泣きながら歩いていると、バスが過ぎていった。 解釈:束ねたるすみれとあるので、摘むのに時間が経っていることが分かる。ずっと泣きながら…

本日の一首 ー訂正版 前川緑(一)

束ねたる春すみれ手に野の道を泣きつつ行けばバスすぎ行きぬ ゆふぐれの光を劃(くぎ)る窓のなかに草や木のあり靑き葉さやぎ 李の花に風吹きはじめ透きとほりたる身をぞゆだねる 野も空も暗い綠のかげらへる景色みるごと君を見はじむ 山の手の小公園ゆ望み…