Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

斉藤政夫 ー 感動を表現するには

感動を表現するには 子どもの虐待事件が報道されるたびに、胸が痛む。2019年1月24日に千葉県野田市で起きた小4女児死亡事件は忘れられない。小学4年栗原心愛(みあ)さんは義父から拷問ともいえるほどの虐待を受けて死亡した。 心愛さんは11月6日、当時…

本日の一首 ー 阿木津英「釋迢空」について③(前半)

下記、釋迢空の略年を通して、時代背景を記す。 1887年(明治20)大阪浪速区の生薬屋に生まれる。 1900年(明治33)十四歳。父に買ってもらった『言海』『万葉集略解』を精読、筆写。 *『言海』・・・国語辞典。 1901年(明治34)十五歳。三兄の進(すすむ…

本日の一首 ー 阿木津英「釋迢空」について②

釋迢空の表記法について。迢空は、読点、句読点を用い、又、他行書きも試みている。これは、自身の判断によるものであるが、その根拠は深いものであることを記しておきたい。 和歌の時代は、短冊や色紙にはしり書きをすることが当然であった。墨書きの字面や…

本日の一首 ー 阿木津英「釋迢空」について①

短歌において、「歌のもつ響きの骨格」、すなわち、「形式」は重要である。十人いれば十人十色では駄目である。上手な噺家のしゃべりは素人のしゃべりとは異なる。これは、「歌」なので、最終的には、「耳の問題」である。近代になってから、「形式と内容」…

本日の一首 ー 釋迢空 わだつみの豊はた雲とあはれなる浮きねのひるの夢とたゆたふ

わだつみの豊はた雲とあはれなる浮きねのひるの夢とたゆたふ わたつみの豊はた雲と あはれなる浮き寝の昼の夢と たゆたふ *歌は「構造」をきちんと分かっていないと、意味が明確に分からない。 *「(雲)と」「(夢)と」は”並列”の「と」になっている。 …

本日の一首 ー 水原紫苑

影ながく曳く人をわが父と識るにせあかしあが花こぼす頃 ひかりさす御堂(みだう)に濡れて長眉の吉祥天の御(おほん)くちびる 飲食(おんじき)の店を尋ねて降(くだり)りゆく階段深き朱(あけ)のいろなる 雲ふみて来たりしやうな男ゐて虹を語らばかなし…

本日の一首 ー 詠み人知らず

凍てつきし道げに寒く一人行く一人追いつく冬風のなか 詠み人知らず 一目惚れだったと思う。高校の夏休みの課題で、短歌を五首作る宿題が出た。提出後、古典の先生に呼び出され、「毎週十首、短歌を作って来なさい」と言われた。生徒指導担当の恐い先生に言…

本日の一首 ー 永井亘(復刻版)『第88号 現代短歌(「第九回 現代短歌社賞発表」)』を読んで。

生きるとき死体はないが探偵は文字をひらめく棺のように 「静けさの冒険」永井亘 p32(瀬戸夏子 選) そもそも、新人賞とは何を指標としているのであろうか。「目新しさ」が最優先基準なのだろうか。そうであれば、なぜその作品が「新しい」のか、その「新し…

本日の一首 ー 『第88号 現代短歌(「第九回 現代短歌社賞発表」)』を読んで。

<第九回現代短歌社賞> 受賞作品(同時受賞・二作品) 母逝きしこの世の冬の夕空をこゑはろばろと白鳥わたる 在りし日の父母を思ひてわれら亡き後をし思ひ仏具を磨く 近づきし白鳥のこゑこの丘にしばし響きてふたたび遠し 打矢京子『冬芽』p24-29(阿木津英 …

本日の一首 ー 河野幸子

今日の日の溺るるごとき一人居の夕べ机を手に押して立つ 河野幸子『八雁 通巻60号』(2021年11月号)p3 「助詞」といえば、河野幸子氏が浮かぶ。玉城徹氏は「(短歌は)最後は人間だ」と仰ったそうだが、その通りだと思う。何かの場で、河野氏が「もう一度…

本日の一首 ー 工藤貴響(『角川短歌 (2021年11月号)-第67回 角川短歌賞発表』)

角川短歌賞の次席(受賞該当作なし)に、工藤貴響さんが選ばれた。ここ半年の「八雁」でも、盤石な歌の力を感じ、一体、どうしたらこんなに成長できるのだろうと思っていたところの、吉報であった。 もっと早くに、この事を書きたかったのだが、選考座談会に…

本日の一首 ー 釋迢空

己斐駅を過ぎしころ ふとしはぶきす。寝ざめのゝちの 静かなる思ひ p452 十月に既(ハヤ)く 時雨の感じする雨あがり居つ。とんねるの外 p452 『倭をぐな』 釈迢空 『釈迢空全歌集』(2016)角川ソフィア文庫 私が最初に「釋迢空」に出会ったのは、現代短歌全…

本日の一首 ー (改・改め)『現代短歌 第87号』を読んで。

『現代短歌 第87号』を読んだ。今特集は「BR書評賞」(ブックレビュー賞)である。一読して難しい内容で、抽象論も多く、尻込みをした。それから数日経って、ぱらぱらと何回か眺めているうちに、ようやく、「理解してみよう」「面白そうではないか」という気…

本日の一首 ー 『現代短歌 第87号』を読んで。

『現代短歌 第87号』を読んだ。今特集は「BR書評賞」(ブックレビュー賞)である。一読して難しい内容で、抽象論も多く、尻込みをした。それから数日経って、ぱらぱらと何回か眺めているうちに、ようやく、「理解してみよう」「面白そうではないか」という気…

「感性を鍛える」(斎藤政夫)

詩でも良い。短歌でもいい。いい作品を作りたい。そう願いながら、もう何年も過ごしてきた……、怠惰に。 たとえば、こんな歌を作りたい。 青葦の茎をうつせる水明かり風過ぐるときましてかがよふ 春日井健 漢字を使わないと伝えられないような歌である。漢字…

本日の一首 (改)ー 佐藤佐太郎

昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立(こだち)のなかに歩みをとどむ p87 おのづから心つかるれ日曜の午後の時間をもてあましつつ p89 座布団を廊下にしきて暑き日のしましを凌ぐ声もたてなく p99 ともしさも馴れゆくらしきこのごろや夕暮れし部屋われは掃…

本日の一首 ー 佐藤佐太郎

昼ごろより時の感じ既に無くなりて樹立(こだち)のなかに歩みをとどむ p87 おのづから心つかるれ日曜の午後の時間をもてあましつつ p89 座布団を廊下にしきて暑き日のしましを凌ぐ声もたてなく p99 ともしさも馴れゆくらしきこのごろや夕暮れし部屋われは掃…

本日の一首ー中西敏子 第二歌集 『呼子』

この道と決めて来れど迷ひたり蜜を流したやうな春昼 連なりてとんぼは夕日へ入りゆけり呼びもどすもの何もなき空 『 呼子』中西敏子 ながらみ書房 (2021) p20 p27 中西敏子氏の歌には、邪念が無い。こうしたらもっと上手くなる、こうしたらもっと万人受けが…

本日の一首ー改訂版・短歌史年表の完成

西暦629年から、2021年までの「『改訂版』短歌史年表」の作成が終わりました。 お知らせ頂ければ、添付ファイルにてお送り致します。 <引用・参考文献> 『現代短歌全集』第一巻より第十七巻(筑摩書房)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…

本日の一首ー野上卓

皿の上にパセリ一片残されて窓の向こうは秋雨の街 『 チェーホフの台詞』野上卓 本阿弥書店 (2021) 逐語訳:皿の上にパセリのひとかけらが残されている、そして、窓の向こうに秋雨の降る街がある。 この歌を選歌するか否か。私は迷い、結局、選歌した。「皿…

本日の一首ー改訂版・短歌史年表の作成過程

只今、上記の様な、短歌史年表を作成しております。 項目は、 西暦・元号・日付・資料に見る日本の近現代・代表的歌集・歌人の生誕と没年・短歌史 の6項目です。 9月末日をもって、完成と致します。 単純なことですが、「長生き」をして「歌集を出し続ける…

本日の一首ー関口智子

「トモコちゃん」と確かに呼んでくれる人ひとり在りて四十三歳 この歌の読み手が分からないところは、「四十三歳」が作者自身のことを指すのか、それとも、「呼んでくれる人」の年齢なのかが、不明瞭な点である。 推敲段階で、文語にしたり、助動詞、助詞な…

<完成版・短歌史年表>

まだまだ、見落としがあるかとも思われますが、元会員S藤氏からのご指導やⅠ上氏の査読を頂き、本年表が完成致しました。 ご協力に、感謝申し上げます。 ご連絡を頂ければ、添付差し上げます。ご遠慮なく、お知らせください。・・・・・・・・・・・・・・・…

本日の一首ー正岡子規

明治十八年 壬午の夏三並うしの都にゆくを送りて 伝へきく蝦夷の深山の奥ならてさけんかたなしけふのあつさは 逐語訳:伝え聞いている北方の深い山奥にありて避ける方法はない今日の暑さは 忍恋 明くれにこひぬ日もなし玉の緒のたえねばたえぬ思ひなるらん …

本日の一首ー木俣修『近代短歌の鑑賞と批評』(1985)明治書院木俣修(短歌史年表作成過程より)

短歌史年表の作成途上で、元会員のS藤様より、様々な資料を頂戴した。本日の進捗状況の報告を兼ねて、上記の表を載せる。とは言えども、これは、木俣修著『近代短歌の鑑賞と批評』の「目次」である。目次をまとめるだけでも、時代の流れを捉えられる。有り難…

お詫びです。 <次回の掲載につきまして>

*下記の通りに予定しておりました更新ですが、自身の管理不足により、早くとも、9月3日(金)、4日(土)、5日(日)を目処に延期することに致しました。ページを開けてくださった皆様には、深くお詫び申し上げます。 予防に予防を重ね続けるしかないまま、…

本日の一首 ー 谷川電話

とりあえず便器に座ってぼくらしいうんちの仕方から考える 谷川電話 『短歌往来』ながらみ書房(2017)p46 この歌をいかに解釈するか。 解釈:とりあえずとあるのだから、何か、その前後に大事があり、その間に、トイレに行き、便器に座って自分らしい排便の…

本日の一首ー短歌史年表

短歌史年表と呼ぶには、まだ及ばないが、年表の作成を試みた。 下記のサイトより、大まかな時代の年表を打ち込んだ後、現代短歌全集に載っている、歌人の生まれた年と亡くなった年を書き込んだ。www.ndl.go.jp https://www.ndl.go.jp/modern/utility/chronol…

本日の一首ー 戦争について学ぶ

嫌いでは無いのに、どうしても覚えられないものに、地理と歴史がある。世界史が最も頭に入らない。けれども、短歌を追ってゆく時、どうしても戦争と近代史は外せないものとして感じるようになった。せめて、日本の戦争くらいはピンと来るようにせねばと、薄…

本日の一首 ー 『第113号 現代短歌新聞』(2021年8月5日発刊)を読んで

月岡道晴『視点ー研究と現代短歌の架橋』(p②)を読んで 以下、抜粋。 「戦後のある頃までは万葉集のみならず、和歌文学の研究は歌人が多くを担っていた」 「『私たちより二世代ぐらい前の研究者たちは、若い時は短歌を作るのが当たり前だった。・・・(中略…