Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首 ー 水島育子

君に会えば楽しきことを言いたくてスマホのメモに話題を記す

  水島育子『八雁』(2022年1月号) p83

 やや欠詠が続いていた水島育子氏の久しぶりの出詠に、ほろりとした。ここまで、実直な歌があるだろうかと思う。昨今の口語短歌は、好き勝手に歌を作ることが、イコール、「(表現の)自由」であり」、「自分に素直である」ことだと思っているのかと、私は勘ぐっている。そうでありながら、本当の自由、本当の素直さ、とは何ですか?と問われると、一概に定まらない自分自身がいる。この歌は、思い切り「自由」で、思い切り「素直」である。誰に読まれるか、読者はどう反応するかなど、微塵も感じられない。極々、日常の中の作者の秘めた密な所作を、真っ直ぐに差し出している。その気概に、彼女自身の豊かな心の自由を感じる。もう少しで、初心を忘れかけそうだった自分を、この歌が守ってくれたように思える。

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*当面の間、月曜日・木曜日を目処とした週二回の更新になります。何卒宜しくお願い申し上げます。

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