Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首

ぞろぞろと鳥けだものを引きつれて秋晴れの街にあそび行きたし  

  前川佐美雄 『植物祭』 靖文社 (1947)p82

 

 前川佐美雄が好きである。第一歌集の『植物祭』しか手元にはないが、ちょっと頁をめくるだけで、生きる勇気が出る。当然、「前川佐美雄が好きなんですか、知っていますよ『ぞろぞろと……』」と言われる機会が多い。しかし、私はその様な、代表歌(?)を挙げることに心地良さを感じない。掲出歌も、他人様から何度も聞くうちに意識するようになったが、初見の際に、この歌を特別視はしなかった。自身の選歌の力不足もある。けれども、初見というのは、本当に一回きりの、自由度の高い、純度の高い、ものである。だからこそ、先入観、あるいは予備知識を、積極的に入れてから読む、ということはしていない。そして、未だ、自分の好きな一首をこの歌集から選べずに至る。