Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首

一人前のカップラーメン分け合って食う人いずこ真夜中に欲し 

        石川亞弓 「八雁」(2014年9月号)p24

 

 最近、頭から離れない一首である。御本人の許可を得て記載した。2014年とあるから今から六年前、石川さんには、ラーメンを深夜に共に分け合う相手がいなかったことになる。そして、それを詠った。なぜ、その歌を今、強く感じるかと言えば、彼女には現在、「夫」が居り、「子」が居る、これに尽きるだろう。詠われた当時、私自身にも結婚や出産への焦りがあった。けれども、それを詠わなかった。詠えなかった。彼女が心から欲したものが、今、実りとなっていることに、この一首の重みを感ずる。歌の力。これこそが、正に、時の試練に生き残る、「歌」の在り様ではないだろうか。