一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております
山崎方代 『山崎方代全歌集』不識書院(1955)p125
片思いだったのか、悲恋の相思相愛だったのか。いかようにも、切ない思いを斜め上から切り取った一首。本当の恋、とはこのようなものではないだろうか。二人にしか分からない、以上に、通い合っていても、所詮、相手は自分ではない。別れ、離れ離れになれば、その思いは自分だけの過去となる。言い尽くせない、本当の恋。赤く実る小さな丸い南天の実。南天の実は、二人の頭上にあったのか、方代ひとりが気が付いていたのか。