さをはうがつ なみのうへのつきを ふねはおそふ うみのうちのそらを
「棹穿波底月 船圧水中天」
棹は穿つ波の上の月を船は圧ふ海の中の空を
紀貫之『土佐日記』 (934年)
19歳の頃、受験勉強の最中に、予備校のテキストで出会った、歌。余程、救われたのであろう。当時の日記に記されている。その頃はもちろんパソコンなどは無く、「さを」「はうがつ」と切り、「はうがつ」とは何ぞや、と古文の講師に尋ねた思い出がある。「さを」「は」「うがつ」であると教えて頂いた。この一首により、古典を古い文学とは決めつけずに、感性は時空を超えるのだと、古文への親愛を持った。