Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一篇(一) ー 宇野千代

 ものを書こうとするときには、誰でも机の前に坐る。書こうと思うときだけに坐るのではなく、書こうと思ってもいないときにでも坐る。<略>或るときは坐ったけれど、あとは忙しかったから、二、三日、間をおいてから坐るというのではなく、毎日坐るのです。<略>

 小説は誰にでも書けるが、毎日、どんなことがあっても坐ると言うことは、誰にでも出来ることではありません。今日一日くらい、坐らなくても好いではないか、とちょっと思ったりする。決して、そんなことを思ってはならない。毎日、ニ十分でも坐るのです。坐ると、昨日まで自分の考えていたこと、書いたことをぱっと思い出す。つまり、昨日までのあなたの技術と、今日これから書く技術とがつながるのです。

 つながる。毎日つながる。<略> それはつながり、重なる。<略> あなたの能力は積み重なる。この作用があるために、毎日坐るのです。坐らない日があると、積み重ねたあなたの能力は、そこでぷつりと切れる。そんな馬鹿なことがあって好いものでしょうか。<略>

 毎日坐って、坐ってから考えるのです。何を書くか、どえらいものを書こうとしてはいけない。肩の力を抜いて、ただ、頭に浮かんだことを正確に書くのです。<略>

  宇野千代 著・出典不明

<メモ・感想>

 2017年10月13日に八雁横浜短歌会の歌会時に、阿木津英氏より配布。メモには、「歌の種をひろう」、「ただ歌を坐して見る、そのうち、嫌でも手を入れたくなる」、「毎日、坐る」とある。