Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

本日の一首 ー 釋迢空 わだつみの豊はた雲とあはれなる浮きねのひるの夢とたゆたふ

わだつみの豊はた雲とあはれなる浮きねのひるの夢とたゆたふ   

 わたつみの豊はた雲と あはれなる浮き寝の昼の夢と  たゆたふ

*歌は「構造」をきちんと分かっていないと、意味が明確に分からない。

*「(雲)と」「(夢)と」は”並列”の「と」になっている。

*「あはれなる」などの形容詞は構成が分からなくなったら外して考える。

*歌の構造がどうなっているかを、まず、見抜くことが大切。それをするには、上から 上から読んで導かれていって、一番下で構造が見えて来る。

逐語訳:海原の上に豊かなる雲があがっている、それと、(自分が)舟の上で浮いて眠っている昼寝の夢と、一緒に、ゆらゆらしている。

解釈:舟に乗っている。随分と長い間乗っている。自分が、寝っころがってうとうとと昼寝をしていると、豊かな真っ白い夏雲が自然と見える。雲も揺らいでいるし、自分も揺らいでいるし、儚い(板子一枚下は地獄)、広い海の上でたった一艘の舟がゆっくり漕いでゆくと、陸の上とは違って、自分が危うげで微かで頼りなく感じられる。もちろん、舟だから始終、ゆらゆらと揺らいでいる。そして、雲も揺れ、自分自身も揺れ、広い大海原にたった一人、存在が非常に危うい感じがして来て、それが、「あはれなる」となるという感慨を呼び起こす。そういう風景であり、そういう感情。

 

<引用・参考文献>

阿木津英『アララギの釋迢空』(2021) 砂子屋書房

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*当面の間、月曜日・木曜日を目処とした週二回の更新になります。何卒宜しくお願い申し上げます。

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