Karikomu

「かりこむ」は、八雁短歌会員を基とした短歌を学ぶ場です。

2018-01-01から1年間の記事一覧

第四十回 『覚めたる歌』金子薫園

『覚めたる歌』金子薫園(明治43年) <選歌十三首>(全357首より) 新しきわれを見いでしとある日に覚めたる歌をうたひつづくる しづやかに梢わたれる風の音をききつつ冷えし乳を啜(すす)りぬ 無花果の青き果(み)かめばなぐさまる、ものうきことの夕ま…

第三十九回 『收穫』前田夕暮

『收穫』前田夕暮(明治43年) <選歌十一首>(全541首より) 魂(たましひ)よいづくへ行くや見のこししうら若き日の夢に別れて 襟垢のつきし袷と古帽子(ふるぼうし)宿をいで行(ゆ)くさびしき男(をとこ) 何物か胃に停滞(ていたい)しあるがごと思は…

第三十八回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(14)

第十四回 個人研究発表ー『積日』選歌 前川佐美雄 第9歌集『積日』(1947年・全500首)より20首 いきどほる心もあらず無賴(ぶらい)なる人間の徒(と)となりて落ち行く 落ちのびて行くにちがひはなけれどもしか言はざりき心素直に みつまたの花さびざびと…

第三十七回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(13)

第十三回 個人研究発表ー『紅梅』選歌 前川佐美雄 第8歌集『紅梅』(1946年・全245首)より14首 あらたまり行くもの何ぞ美しき春の現象世界のみかは インテリと罵(ののし)られ無産者運動に加はらむとしき二十年前(にじふねんまへ)は 鴎州に行かむ願望(…

第三十六回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(12)

第十二回 個人研究発表ー『金剛』選歌 前川佐美雄 第7歌集『金剛』(1945年・全653首)より18首 われは明治の少年ぞかし菊の香(か)にむかしを思ふこころ切なき 荒壁(あらかべ)の家(いへ)に住まへど御三代にあへらく今日は生ける甲斐(かひ)あり たか…

第三十五回 私はなぜ前川佐美雄が好きか(11)

第十一回 個人研究発表ー『日本し美し』選歌 前川佐美雄 第6歌集『頌歌 日本し美し』(1943年・全618首)より 〈選歌18首〉 鮮明(あざやか)によみがへる我(われ)が民ごころに既に紅々(あかあか)し今年(ことし)のもみぢ 日に月に息づかしさの重(おも…